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マリメッコのデザインも手がける世界的テキスタイルデザイナー鈴木マサルさんとハタ印のコラボで実現したジャカード布製本ノートが出来上がるまで

鈴木マサル×槙田商店


山梨ハタオリ産地の今を伝えるプロジェクトハタオリマチのハタ印では「産地の織物を広く伝えたい」という思いから、山梨ハタオリ産地のテキスタイルを使ったノートブックをつくることにしました。デザインをお願いしたのは、世界的に活躍されているテキスタイルデザイナーの鈴木マサルさん。

世界的テキスタイルデザイナー×世界に誇れるハタオリ文化

鈴木マサルさんのデザインは、見ているだけで元気になれるカラフルで大柄なテキスタイルが魅力。自身のブランド「OTTAIPNU(オッタイピイヌ)」をはじめ、フィンランドの老舗ブランドmarimekko (マリメッコ)やUNIQLO(ユニクロ)など国内外のプロジェクトに携わっている注目のテキスタイルデザイナーです。

鈴木マサルさんに生地のデザインをお願いするにあたって、まず私達が苦労したのはハタヤさん探し。実は作りたい条件に合ったハタヤさんを探すのはとっても大変なのです。一重に「ハタヤさん」といっても、普段織っている生地の幅や糸の種類、織機の種類によって特徴が異なります。今回作る生地は織物の最大リピート幅(釜口)が大きいジャカード織機でなければ作ることができません。この要望にピッタリ合ったのは、ハタオリマチで150年以上続く老舗のハタヤさん槙田商店。


主に傘生地や服生地を織っているため、十分なリピートの生地を織ることができます。 世界に誇れる山梨県のハタオリ文化から生まれたノートブック 富士吉田に訪れた観光客が思わず欲しくなる、ハタオリマチをモチーフとしたデザイン3種を元に、組織に起こすための指示書を槙田商店のテキスタイルデザイナー井上美里さんに作成していただきます。

テキスタイルの組織をデザインする井上美里さん。

鈴木さん「ヨコ、4丁までいけるんだっけ?」
井上さん「実は6丁までいけるんですけど、職人さんが泣きます(笑)」

一般人が聞いたら「???」が浮かんでしまいそうな会話ですが、どんな糸をどんな組み合わせで使い、タテ糸とヨコ糸を織り目ごとに上に渡すか下に渡すか、どの部分を綾織りにして、平織りにするか、どんな素材の糸を使うか、伸縮性のある糸をつかったらどんな表情になるか、風合いを重視するか機能性を重視するかなど、糸や織機の特性を知り尽くしたテキスタイルデザイナーだからこそできる打合せを行います。様々なテキスタイルを触りながらイメージを擦り合わせていきます。

次は、サンプルで織った試織(ししょく)を確認しながら、最終的な生地のイメージを確定させていきます。織物の組織やヨコ糸の素材が違うだけでこんなにも色の出方や表情が変わります。

鈴木さん「ここの線、タテ出しでもう少しパキっと出せる?」
井上さん「はい、少しピクセル増やしておきますね。」

鈴木さんの感覚的な指示出しは続きますが、そこは流石プロのテキスタイルデザイナー同士です。仕上がってきた生地を見て完成度の高さに驚かされます!

使う糸の種類が違うだけでこんなにもイメージや風合いが変わります。


富士吉田愛をふんだんに詰め込んだテキスタイルは、織機のスペックを把握した上でのデザイン→デザインを糸の組み合わせと織組織で布に仕上げる紋意匠→試織を経て、ようやく製造されるのです。

今回は、ノートになるので生地に裏張り加工を施し、製本作業を行います。 なんと、カットジャカードのノートブックは1点1点手製本。 こうして産地を代表するモチーフが楽しめるテキスタイル3種はノートになりました。


SARU
タテ糸が白のジャカード生地。富士吉田のシンボルである富士山・さる・忠霊塔が描かれています。インターネットで「JAPAN」と検索すると最初に出てくる画像は、富士吉田新倉山浅間公園から見える富士山と忠霊塔の景色。今では外国人が多く訪れる観光スポットです。


SHIKA
ベージュのタテ糸を使ったジャカード生地。富士吉田は山が多いため、鹿が多くいるのだとか。愛らしい鹿柄も3丁という限られた色数の中で、モチーフごとにどこでヨコ糸を変えるか想定した巧みなデザインです。


HATAORI
そして豪華なカットジャカード生地はまさかの文字テキスタイル!外国人観光客にも楽しんでもらえるようにと、あえて平仮名・カタカナ・漢字を混ぜて立体的な文字をデザインしました。文字の後ろには黒い富士山もあしらわれています。でも実はこの生地、織られた直後はこんな姿。

うっすらと文字が見えますが、ピンクと青の糸が全面に並んでいます。このヨコ糸をちょきちょき切って後加工を施すため「カット」ジャカードと言われています。カットジャカードは、織られた直後は完成形ではないので、デザインを考えるのも組織を考えるのも大変なこと。鈴木さんは織物や組織について詳しいため、カットジャカードのデザインができるのです。

今回、織物を制作するにあたって、鈴木さんに最初にアドバイスをしていただいたことは「イメージに近い生地をたくさん用意して持っていった方が良いよ。」棚にぎっしり積み上がったテキスタイルの中から、さまざまな風合いの布を見せてくださいました。 作りたいイメージはあるけれど、近い風合いのものが出来るか悩んでいる方は、まずはどんな生地があるかオリキョー(山梨県絹人繊織物工業組合)に触りに来てくださいね。

テキスタイルデザイナー鈴木 マサル
多摩美術大学染織デザイン科卒業後、粟辻博デザイン室に勤務。1995 年に独立、2002 年に有限会社ウンピアット 設立。2005年からファブリックブランド OTTAIPNU(オッタイピイヌ)を主宰。自身のブランドの他に、2010年よりフィンランドの老舗ブランドmarimekko のデザインを手がけるなど、現在、国内外の様々なメーカー、ブランドのプロジェクトに参画。東京造形大学教授、有限会社ウンピアット取締役。

槙田商店
https://www.makita-1866.jp